魚類の多様な泳法を再現する
統一的モーションプランナー

萩原幹大
上元晃
中䑓久和巨
SIGGRAPH 2016
ACM Transactions on Graphics (SIGGRAPH 2016)

Abstract

多様な魚が水中を活き活きと泳ぐような水中シーンの表現は、アニメーションやゲームをはじめとした多くのコンテンツにおいて必要とされています。魚類は全体でおよそ28,000 種と非常に高い多様性を有しています。ごく限られた海域に限定しても、例えば、日本の若狭湾で83 種、ハワイのハナレイ湾で150 種もの魚種の生息が確認されています。また魚類は浅瀬から深海まで、また熱帯から極海まで多様な環境に生息しているため、身体構造や泳ぎ方は多岐にわたります。

さらに魚類は、敵から逃げるときにC-start と呼ばれる泳ぎ方を行うなど、状況によって泳ぎ方を変えることもあります。そのため、リアルな水中シーンを描くためには、魚の種類や、魚を取り巻く状況の変化によって生じる泳ぎ方のバリエーションを的確に再現することが重要となります。また、ゆったり泳ぐか小刻みに素早く泳ぐか、どこまでも自由に泳ぐか同じところを旋回するかといった泳ぎ方の特徴を、作品の場面や演出意図を反映させて指定できることも必要となります。

我々はこの問題を解決するアプローチとして、魚類の生理学的な特性と、実際の魚が遊泳するために行うモーションプランニングの仕組みに注目しています。近年、生物学の分野において、魚が泳ぐ際の意思決定能力についての研究が進んでいます。例えば、Archerfish と呼ばれる魚種やMachaca と呼ばれる魚種は、虫や落ちてくる果物を食べる際に、獲物の動きを見てから自分がいつどこへ移動するのか瞬時に意思決定して、どれくらい力を出して泳ぎ始めるかを決めることが近年明らかにされています。また魚類生理学の分野では、Wrasse やBoxfish などの魚種が、遊泳速度によって身体やひれの使い方、すなわち泳ぎ方を大胆に変えていることが知られています。

本研究では、様々な骨格の魚類による遊泳モーションを統一的に実現するために、周囲の状況を認識して、泳ぐ場所(目標地点)と、泳ぎ方(身体の使い方、速度など)の選択を行う意思決定メカニズムを共通エンジンとして実現しています。これにより、泳ぎ方の選択ルールや、骨格制御ルールを変えることで、それぞれの魚種に合った遊泳モーションを簡単に作ることができます。また、個々の魚が、周囲を認識して自律的に泳ぎ方を制御しているため、クリエイターによって指定された経路を泳いだり、大きな魚が来たときに群集が散開して戻って来るなどの複雑な動きも自動生成することができます。リギング済みの一般的な魚のCG モデルを用意すれば、パラメータを設定するだけでCG モデルをリアルに動かすことができるため、既存のグラフィックスパイプラインへの組み込みも容易であると考えられます。

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[Copyright 2016 by the authors. This is the author's version of the work. It is posted here for your personal use. Not for redistribution. The definitive version is published in ACM Transactions on Graphics, http://dx.doi.org/10.1145/2897824.2925977]

Citation

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@article{satoi:2016, author = {Satoi, Daiki and Hagiwara, Mikihiro and Uemoto, Akira and Nakadai, Hisanao and Hoshino, Junichi} title = {Unified Motion Planner for Fishes with Various Swimming Styles}, journal = {ACM Transactions on Graphics (Proc. SIGGRAPH)}, url = {http://entcomp.esys.tsukuba.ac.jp/en/project/unified-motion-planner/}, volume = {35}, number = {4}, year = {2016}, doi = {10.1145/2897824.2925977}, keywords = {fish swimming, motion planning, fish school control}}

Acknowledgements

We thank the anonymous reviewers for their helpful comments. We thank Kenichiro Akimoto, Naoya Amata (STUDIO 4°C Co., Ltd.), and Masato Hirabayashi for their help on developing the proposed method. We also thank Masazumi Nakamura, Masayuki Akiba, Yoko Kubotera, Erika Tsuzuki, and Yoshihiko Ota (Intel Corporation) for their help on the demonstration of interactive application in this work. This work was funded by JSPS KAKENHI 15K12178 and HAYAO NAKAYAMA Foundation for Science & Technology and Culture H26-A1-98.

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